先日、「信頼と確認」というテーマで専門家向けにお話しする機会がありました。
その準備を通じて改めて感じたのは、これは専門家だけの課題ではなく、ご家族やこれから相続を迎える方にとっても大切な視点だということです。相続や終活を考えるとき、信頼と確認は常に表裏一体です。信頼があれば話し合いはスムーズに進みますが、確認を怠ると小さな誤解が大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
例えば「うちは大丈夫」「家族だから分かっているはず」と安心したまま進めてしまうと、思わぬ行き違いが生じてしまうことがあります。
今回は、信頼を裏付ける“確認”の大切さを、私自身の実務経験を通じて整理してみたいと思います。

確認が後回しになる理由
人は「大丈夫だろう」という安心感に流されやすいものです。
家族の間では普段の信頼関係から「確認しなくても通じている」と思い込んでしまう。
また、忙しさや気まずさから「今は言わなくてもいいか」と先送りにしてしまうこともあります。
専門家に任せきりにして「自分では確認しなくていい」と考えてしまうこともあります。
しかし、確認を後回しにしたことで、後から「なぜあのとき確かめなかったのか」と後悔する事例を、私はこれまで何度も見てきました。
私自身も、そう考えてしまうことがあります。けれど、信頼があるからこそ確認はいらない、のではなく、信頼があるからこそ、確認が大切になるのだと思います。
三つの確認の視点
確認といっても、一言で済むものではありません。私は日々の実務の中で、次の三つの視点を意識しています。
・書類の確認
戸籍や謄本、契約書など、手続きに必要な書類が正確であるかどうか。
・関係の確認
家族の認識に食い違いがないか。話のつじつまが合っているかどうか。
・意思の確認
ご本人の気持ちや希望が、本当に反映されているかどうか。
書類が整っていても、関係や意思が抜けていると不信感のもとになります。むしろ「人と人との確認」こそが一番大切なのかもしれません。
小さな不安をそのままにしない
相続のご相談で、「ちょっと気になるんですけど…」という言葉をよく耳にします。そうした小さな不安や違和感をそのままにしないことが大切です。
例えば、「書類の内容を十分に理解していないまま手続きが進んでしまう」「専門家から説明を受けたが、ご本人の意向が本当にそうなのか確認できていない」といったケース。
そのときは大したことではないと思えても、後から家族の間に不信感を生んでしまうことがあります。
小さな不安を声に出し、確認につなげること。
それが、安心につながります。
確認は一人で抱え込まない
相続の現場は、多くの場合、複数の専門家が関わります。
その中で、最初に相談を受ける立場の人が“確認の起点”になることも少なくありません。
「ちょっとおかしいな」と感じたことを、一人で抱え込まないことが大切です。
家族と話し合い、必要なら専門家に相談し、疑問を共有していく。
そうすることで、確認が次につながり、結果としてご家族全体の安心に結びつきます。
さいごに
信頼は感情で築かれ、確認は行動で支えられるものです。
そして確認とは、単に書類を見ることではなく、その背景にある人や家族の想いを確かめることでもあります。
「小さな不安を無視せず、立ち止まって確かめる」
その一歩が、ご家族の信頼を守ることにつながります。
私自身も、日々の実務の中で「信頼を裏付ける確認」を大切にしています。