任意後見契約は、家庭裁判所からの任意後見監督人の選任によってスタートします。任意後見監督人の選任の要件、資格、職務などについて「任意後見契約に関する法律」に定めています。
任意後見監督人の選任
任意後見契約の登記がされている場合において、精神上の障害により本人の判断能力が不十分な状況にあるときは、任意後見監督人の選任を家庭裁判所に請求することが必要になります。
請求は、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者ができます。請求については、申立人が家庭裁判所に申立書を提出して行います。申立書の他に、親族関係図、本人の財産目録、診断書、任意後見契約公正証書の写しや登記事項証明書などが必要です。
また、任意後見監督人の選任は、本人の申立て以外の請求の場合は、本人の同意が必要とされています。ただし、本人が意思を表示することができないときは同意は必要ありません。
任意後見監督人になることができない人
・任意後見受任者又は任意後見人の配偶者
・直系血族及び兄弟姉妹
・民法847条各号に掲げる者(①未成年者②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人③破産者④本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族⑤行方の知れない者)
任意後見監督人の選任について
任意後見監督人の選任については、「成年後見人の選任」を準用しますので、家庭裁判所が任意後見監督人の選任をするには①本人の心身の状態並びに生活及び財産の状況②任意後見監督人となる者の職業及び経歴③任意後見監督人となる者と本人との利害関係の有無④本人の意見⑤その他一切の事情を考慮しなければなりません。
任意後見監督人の職務
任意後見監督人は任意後見の事務を監督し、その事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすることを主たる職務とし、いつでも任意後見人に対しその事務の報告を求め、任意後見人の事務又は本人の財産の状況を調査することができます。
そして、任意後見人に不正な行為や著しい不行跡その他その任務に適しない事由があると認めるときは、任意後見監督人は家庭裁判所に任意後見人の解任を請求することができます。
その他の事務として、①急迫の事情(任意後見人が病気になった場合など)がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること②任意後見人又はその代表する者(任意後見人の親権に服する子など)と本人との利益が相反する行為について本人を代理します。
さいごに
任意後見監督人の選任に際して、家庭裁判所は本人の意見を考慮するものとしていますから、任意後見契約の締結の際に、任意後見監督人の候補者を本人の希望として公正証書に記述することは可能です。しかし、任意後見監督人の選任は、家庭裁判所の合理的な裁量に委ねられているため、利害関係のない公正な第三者専門職を選任する方向にあります。