私が行政書士として開業したのは、令和4年5月。
そして、今年5月で開業4年目のスタートを迎えました。
また4月には、東京都行政書士会立川支部の理事をお引き受けすることになり、支部活動にも携わっていけたらと思っています。
そんな折、令和7年6月6日、国会において「行政書士法の一部を改正する法律」が可決・成立しました。施行は令和8年1月1日。
今回は、この法改正の中身を読み解きながら、自分の役割についてあらためて考えてみました。

目的から「使命」へ :行政書士の存在意義とは
今回の改正で最も象徴的だったのは、行政書士法第1条の文言が「目的」から「使命」に改められたことです。
改正前は「この法律は行政書士制度を定めることで、行政手続の円滑な実施を目的とする」とされていました。
しかし改正後は、「行政書士は、その業務を通じて、行政手続の円滑な実施に寄与し、国民の利便・権利利益の実現に資することを“使命”とする」と、職業そのものの在り方に踏み込んだ表現となりました。
これは、行政書士という資格が、単なる技術職ではなく、公益的な使命を帯びた存在であることを明確にするものです。
「報酬を得ることが目的なのではなく、公益に寄与した結果として報酬をいただく」
この姿勢が、あらためて法の文言として打ち出されたことに、深く共感を覚えました。
「品位」と「デジタル対応」:新たに加わった職責
あわせて、第1条の2として「職責」も新設されました。その中には、以下の二つの重要な要素が盛り込まれています。
- 品位保持と法令・実務への精通、誠実な業務遂行
- デジタル社会の進展を踏まえた情報通信技術の活用
ここには、単に手続きを代行するだけでなく、行政書士としての人格や知識、そして時代への適応力が求められていることが、はっきりと示されています。
特に「デジタル社会における行政書士の役割」は、今後ますます問われるテーマです。
手続が電子化されても、誰もがそれを使いこなせるわけではない。
だからこそ、デジタルだけでは補いきれない現場の実情や相談者の不安に向き合う役割が、行政書士にはあるとあらためて感じました。
広がる特定行政書士の役割:温めてきたもうひとつの力
今回の改正では、特定行政書士が代理できる行政不服申立ての範囲が拡大されました。
これまでは、行政書士が作成した書類に関する許認可等についてしか、不服申立ての代理ができませんでしたが、改正後は「作成することができる書類」にまで対象が広がります。
つまり、申請者本人が作成した書類に関しても、特定行政書士が代理人として関与できるようになります。
私自身も特定行政書士の付記を受けています。しかし、これまでその資格を業務に活かした経験はありません。
「いつか必要になるかもしれない」と思いながら、静かに温めてきた、もうひとつの力のような存在でした。
けれど今回の改正に触れ、「いまこそ、これまでの備えを活かすときが来ているのかもしれない」と思い始めています。
行政手続きの中で声が届きにくかった人の思いを、かたちにして届けていくために。そして、不利益を受けたまま立ち尽くしている方の支えになるために。
特定行政書士の役割を、自分なりに実務のなかで紡いでいけたら。そんな気持ちが芽生えています。
第19条:非行政書士による業務への警鐘
行政書士法第19条には、「行政書士でない者が業務を行ってはならない」とする制限規定がありますが、今回はその文言に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という表現が追加されました。
つまり、「会費」「相談料」「成功報酬」「コンサル料」などと称して実質的に報酬を得て書類作成等を行うことは、明確に違法とされることになりました。
この変更は、法の運用を厳しくするものではなく、もともと解釈上そうであったものを条文上明文化したにすぎないとも説明されています。
ですが、実務の現場では、行政書士ではない者が補助金申請書などの「代筆」や「代行」を有償で行っていたケースも散見されており、線引きの明確化は大きな意味を持つと感じます。
行政書士としての専門性と信頼性を守るためにも、あらためて自分たちの立ち位置を見つめ直したいと思いました。
両罰規定の整備:信頼される制度へ
加えて、非行政書士による違反行為に対しては、その本人だけでなく、業務としてその行為を行わせた法人にも罰則が及ぶ「両罰規定」が新たに設けられました。
これにより、違反行為があった場合、たとえ知らなかったとしても、その法人にも責任が問われることになります。
士業制度の信頼性を支えるのは、制度そのものだけでなく、それを取り巻く環境整備でもあるのだと感じました。
さいごに
今回の法改正は、行政書士制度の「未来への方向性」が明確に示された、大きな節目だと思います。
私自身、制度の内側にいる者として、法の文言に込められた意味を他人事ではなく、自分事として受け止めています。
使命は、ただ与えられるものではなく、日々の実務の中で問い続け、形にしていくもの。
どんな制度のもとでも、目の前のご相談に誠実に向き合い、「自分にできること」をひとつずつ実務の中で形にしていきたいと思います。