任意後見制度を利用される方が増えてきました。行政書士として成年後見や相続などのご相談をお受けする中で、任意後見監督人に関するご質問をいただく機会も増えてきました。
そこで感じるのは、「安心」とは制度そのものよりも、それを実際に動かす「人の心」によって支えられているということです。
任意後見制度は、自分自身の判断能力が低下したときに備え、あらかじめ信頼できる人を「任意後見人」として決めておく仕組みです。そして任意後見人が実際に活動を始める際には、家庭裁判所が「任意後見監督人」という立場の人を選任します。
今回は、そんな任意後見監督人について、少し私自身の想いも交えながらお伝えします。
任意後見監督人とは?
任意後見監督人とは、任意後見人が適切に職務を果たしているかを監督する役割を持った人のことです。具体的には、任意後見人から定期的な報告を受け、その内容が適正であるかを確認し、本人の利益が損なわれることのないよう監督・確認を行います。
言わば、制度が正しく運用されていることを見守る、客観的で中立な第三者です。
制度だけでは守れないもの
成年後見制度に携わって感じるのは、制度自体がいくら整備されていても、実際に制度を運用する「人の心」によって、安心感や満足度が大きく変わってしまうということです。
任意後見人や任意後見監督人には、法的に定められた細かな権限や義務がありますが、実際には想定外の状況や判断に迷う場面が多く存在します。
そんなとき、任意後見監督人がどのように動けるか。その人自身の「心のあり方」や「想像力」が重要になります。
任意後見監督人の選任についての実際
任意後見監督人は、家庭裁判所が本人の判断能力低下の段階で選任します。必要書類を家庭裁判所に提出することで手続きが進められますが、実際にどのような方が任意後見監督人に選ばれるかは、ケースごとに異なります。
家庭裁判所は、候補者の専門的な知識や経験に加えて、人柄、信頼性、中立性、そして本人との利害関係の有無などを総合的に判断します。
近年では親族が任意後見監督人に選ばれるケースもありますが、利益相反や客観性の観点から、弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士など第三者の専門職が選ばれる傾向も見られます。
任意後見監督人の報酬について
任意後見監督人の報酬は、本人の財産から支払われます。具体的な報酬額は、任意後見監督人が実際に選任された後に家庭裁判所が決定します。その際、本人の財産状況や監督業務の負担内容、難易度などが総合的に考慮されます。
一般的には月額1万円~3万円が目安とされていますが、具体的な金額は個々の事情により異なります。あらかじめ正確な報酬額を確認することは困難ですが、報酬の目安や考え方について疑問や不安がある場合は、専門家に相談しておくことをおすすめします。
私自身の想い
私はこれまで成年後見制度や相続、終活などのご相談を通じて、多くの方とお話をしてきました。その中で感じるのは、「制度は手段であり、最も重要なのは、それを使う人の想いに寄り添える人である」ということです。
任意後見制度も同じで、書類や手続きが揃っていればそれで良いわけではありません。むしろ、「誰を信頼し、誰に自分の未来を託すか」という「想い」の部分が非常に大切だと感じています。
だからこそ、任意後見制度を検討する際は、制度を理解するだけでなく、「誰に任せれば自分らしくいられるか」ということをじっくり考える時間を持っていただきたいと思います。
最後に
任意後見監督人は、任意後見制度が正しく運用されるために不可欠な存在です。その役割は、公正で客観的な立場から任意後見人を監督することにあります。
任意後見制度が本当の意味で効果を発揮するためには、任意後見人と本人の間に信頼関係が築かれていることが重要です。その信頼関係を守るためにも、制度や手続きだけでなく、「信頼」や「想い」を共有できる任意後見人を選ぶという視点を大切にしていただきたいと思います。
※この記事は2022年9月30日に作成した内容を、最新情報や筆者の想いを反映してリライトしました。