遺言執行者は、遺言の内容を実現するために重要な役割を担います。
遺言者の意思によって、遺言執行者を複数指定することができます。
しかし、複数の遺言執行者による執行には、特有の注意点があります。
今回は、複数の遺言執行者を選任する場合に、遺言作成者が考慮すべき点や、執行者自身が留意すべき点について解説します。
遺言執行者の人数
民法では、遺言執行者の人数について、「一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる」と定められています(民法1006条1項)。
つまり、遺言執行者は1人でも複数でも構わず、遺言者の意思によって自由に決めることができます。
複数人の遺言執行者を選任するメリットとデメリット
メリット
・専門性や能力の異なる複数の遺言執行者を選任することで、それぞれの専門性を活かした効率的な遺言執行が可能になる。
・遺言執行者の負担を軽減できる。
・遺言執行者の一人が死亡したり、辞任したりした場合でも、他の遺言執行者が引き続き業務を遂行できる。
デメリット
・遺言執行者の間で意見が対立した場合、意思決定に時間がかかったり、紛争に発展する可能性がある。
・遺言執行者の数が増えるほど、コミュニケーションや調整に手間がかかる。
・報酬の支払いなど、事務手続きが複雑になる。
遺言執行者の選任方法
遺言執行者は、遺言書に記載することで選任することができます。遺言書には、以下の事項を記載します。
・遺言執行者の氏名
・遺言執行者の住所
・遺言執行者への報酬
複数の遺言執行者における任務分担
複数の遺言執行者を指定する場合、それぞれの任務を明確にしておくことが重要です。
遺言書に、具体的な任務分担を記載することで、後のトラブルを防止することができます。
例えば、以下のように記載することができます。
・Aさんは、遺産の調査・評価を担当する。
・Bさんは、遺産の分配を担当する。
・Cさんは、葬儀の手配を担当する。
遺言書に任務分担を記載していない場合は、民法1006条2項の規定に基づいて、以下のルールが適用されます。
・遺言執行者の任務は、過半数で決定する。
・遺言執行者の一人が単独で任務を行うことはできない。
・ただし、遺言者が別段の意思を表示している場合は、その意思に従う。
遺言執行者の単独執行
遺言者が「各遺言執行者はそれぞれ単独で執行することができる」と意思表示している場合は、遺言執行者は単独で任務を行うことができます。この場合、過半数で決定する必要はありません。
まとめ
複数の遺言執行者を指定する場合は、メリットだけでなくデメリットも理解した上で、慎重に検討することが重要です。遺言書に任務分担を明確に記載しておくことで、後のトラブルを防止することができます。
また、遺言執行者自身も、それぞれの役割を理解し、円滑な執行に努める必要があります。