栗田 政和 競争社会といわれる現代では、意識していなくても、誰かと自分を比べてしまうことがよくあります。
周囲との比較がプレッシャーやストレスになり、疲れてしまうことも少なくありません。
だからこそ、少し立ち止まって、比較やライバル視を手放すこともときには必要です。今回は、比べることを手放すことについて考えてみました。
比較が「普通」になっている社会
振り返ると、私たちは幼い頃から、何かと誰かと比べられながら生きてきました。
テストの点数や運動能力、就職活動、職場での評価など、知らず知らずのうちに、「人と比べること」が日常になっています。
しかし、比べることが当たり前になると、本来の目的や自分の望みより、「誰かよりも優れているかどうか」が基準になってしまいます。
私自身も、気づかないうちに他人と比べては、自分に足りないものばかりに目が行き、心が窮屈になったことがありました。
比較から離れると見えるもの
では、もし比較やライバル視を手放すことができたら、どんなふうに心は変わるのでしょうか。
私は日々の相談業務の中で、多くの方とお話をさせていただきます。終活や相続の相談においても、他人との比較によって不安を抱える方は少なくありません。「周囲はもっと準備が進んでいるのでは」と悩まれる方も多くいます。
しかし、本当に大切なのは、「他人と比べてどうか」ではなく、「自分自身がどうしたいのか」という視点です。
比較を一旦手放してみると、自分の望みや、本当にやりたいことがはっきりと見えてくることがあります。
人と比べる視点を少し変えるだけで、心に小さな余裕が生まれることもあります。
比べることを手放すと、それまで見えなかったささやかな幸せや、自分自身の小さな成長に気づく機会が増えていきます。
比較やライバル視を手放すための小さな習慣
とはいえ、いきなり比較をやめることは簡単なことではありません。
私自身も、気づかないうちに他人と比べてしまうことがあります。そんなとき、心がけていることがあります。
一つは、誰かと比べるのではなく、昨日の自分に意識を向けてみることです。
「昨日より少しでも穏やかに過ごせた」「昨日はできなかったけれど、今日は少しだけ成長した」
そんな小さな変化に目を向けると、気持ちが少し軽くなる瞬間もあります。
もう一つは、他人の評価ではなく、自分が今日、どんなことに喜びや満足感を感じたかに目を向けることです。
うまくいったことや誰かに認められたことよりも、自分自身が「うれしい」と感じた小さな瞬間を大切にする。
そんなふうに意識を向けるだけで、心が穏やかになることがあるように思います。
終活について考えるときも、他人のペースや周囲の状況に振り回されるのではなく、
自分自身の望みや家族への想いに素直に向き合うことが大切だと感じています。
日々の相談を通じて、比較を手放すことで生まれる心のゆとりや、静かな豊かさを実感することが多くなりました。
さいごに
私たちは、それぞれのペースで人生を歩んでいるのだと思います。
誰かと比べて、早いとか遅いとか、そんなことを気にする必要は、本当はないのかもしれません。
もし、誰かと比べることを少しでも手放せたなら、毎日の景色が、今よりもう少し豊かに映るかもしれません。
競争社会の中で、つい周囲と比べる癖が顔を出したときは、慌てずに、一度立ち止まってみようと思います。
比較やライバル視を手放したその先には、自分なりの想いや、心に広がる静かなゆとりが待っているような気がするからです。