相続が起こったときに、遺言書があれば法定相続ではなく、遺言者の意思が優先されます。残された家族が困らないように、生前に遺言書を作成することはとても大切です。
ところが、親が亡くなって、遺言書があって、内容を確認したときに、相続人の事情と違った内容であっても遺言通りに相続しなければならないのでしょうか。
今回は視点を変えて、遺言書の内容と違った遺産分割が出来るのかについて整理してみました。
そもそもどんなとき?
そもそも遺言書と違った遺産分割をしたいときって、どんなケースがあるのでしょうか。
・複数の不動産をそれぞれ長男と次男にさせる遺言があったときに、逆がよかったよねって兄弟の希望が一致したとき。
・全て長男に相続させるという遺言だが、長男自身が独り占めすることをはばかって、せめて遺留分相当は、他の相続人にも分けたい場合。
など、そこには争いの火種がないことが前提になります。
遺言書と異なる遺産分割協議も可能
結論として、相続人全員の同意があれば、遺言書と異なる遺産分割をすることが可能です。
注意が必要なのは、遺言執行者がいる場合です。遺言者の死後に遺言書の内容を実現する
手続きを行う人物を『遺言執行者』といいます。遺言執行者には、遺言書の内容に記載されたことを実現する権利と義務があります。そのため、遺言執行者がいる場合には遺言と異なる遺産分割協議をするには、遺言執行者の同意が必要になります。
実際には、相続人全員が同意しているのに遺言執行者が反対することはほとんどないでしょう。
遺言書と異なる遺産分割協議ができない場合
では、遺言書と異なる遺産分割協議ができないケースはどんなときでしょうか。
・相続人以外の受遺者がいる
相続人以外の受遺者(=遺言書によって財産をもらった人)がいる場合は、相続人全員が遺言と異なる遺産分割協議をすることに合意していたとしても出来ません。
受遺者の権利を相続人が一方的に奪うことはできないからです。
逆に言えば、受遺者自身が遺言書と異なる遺産分割協議をすることを了承すれば、問題はありません。具体的には受遺者が「遺贈を放棄する」ということです。
・遺産分割が禁止されている
被相続人(遺言者)は、遺言書によって遺産分割を禁止することができます。
遺言書で遺産分割を禁止する場合、禁止期間は最大で相続開始のときから5年です。このように、遺言書で遺産分割が禁止されていたら、最大5年は相続人全員が合意しても遺言書と異なる遺産分割協議は出来ないことになります。
まとめ
遺言書と異なる遺産分割協議をしたいと考えるのは、遺言書の内容より良い分割方法について、相続人全員が合意すると言うことです。
もっと遡れば、遺言書作成時点で、相続される側のご家族全員の想いや考えも共有できていれば、後々、遺言書と異なる遺産分割協議をする必要もないですね。