「あの人にはあるのに、自分にはない…」「あの人はうまくできるのに、自分にはできない」と、日々SNSなどでさまざまな情報が入ってきます。ときには、身近な人の投稿にも出世、成功、華やかな生活などが目に入ります。それらを見たときに湧き上がる複雑な感情、それが嫉妬と羨望です。しかし、嫉妬や羨望は悪い感情だけではなく、むしろ自分が何かを欲している、成長したいという心の証でもあります。今回は、嫉妬や羨望の感情を前向きに考えてみます。
嫉妬と羨望とは
「嫉妬」とは、自分よりも優れていると感じられる人や物に対して、妬み、ねたみ、うらやみといった感情を抱くことです。「羨望」とは、他人が持っているものや能力、経験などを強く欲しがり、うらやましいと感じる感情のことです。
どちらも自分との比較から生まれる感情です。
嫉妬と羨望を前向きに
他者との比較から嫉妬や羨望を感じることがあります。特に、他の誰かが自分よりも成功していると感じる時、その感情が顔を出します。しかし、そうした感情が生まれた時こそ、一度立ち止まり、自分の感情と向き合い「なぜそのように感じるのか」「本当に自分が望んでいることは何か」と問いかけることが大切です。
そうすることで、嫉妬や羨望は、単なるネガティブな感情ではなく、自分が本当に大切にしている価値や目標に気付かせてくれるものになります。
この「立ち止まる」ことは、相続においてもとても有効です。感情的な衝突が起こりやすい場面では、事実と感情を分けて考えることで、心を落ち着けて冷静に物事を見つめ直すきかっけになるからです。
相続の場面における嫉妬と羨望
ご相談を受ける中で、「自分だけが不公平だ」と言われる場面があります。相続において、兄弟姉妹間の遺産配分や親からの扱いの違いが、長年の感情を呼び起こし、「嫉妬」や「羨望」といった感情に結びつくことが少なくありません。たとえば、親が特定の子供に経済的支援を多く与えていた場合、他の兄弟はその待遇に不満を抱き、「なぜ自分だけが…」という思いが募ります。そうした感情が相続の話し合いに影響を与え、家族間の対立を深めてしまうことになるわけです。
こうした感情は自然なものです。だからこそ感情そのものを否定するのではなく、まずそれに気づき、向き合うことが、解決への第一歩となります。
嫉妬や羨望にどう向き合うか
嫉妬や羨望の感情を抱いたとき、それを押し殺すのではなく、なぜそのように感じるのかを振り返ることが大切です。それらの感情が湧き上がる背景には、自分自身の期待や価値観が関係していることが多いからです。相続においても同様で、感情だけでなく、事実に基づいた冷静な判断が必要となります。
「自分だけが不平等だ」と感じた場合、まずはその感情を一度冷静に捉え、状況を客観的に見つめ直すことも必要です。親が特定の子供に多くの支援をしていた背景には、さまざまな事情があったかもしれません。感情だけに引きずられることなく、状況を多角的に見つめることが大切です。
感情の先に見えるもの
嫉妬や羨望という感情は、誰にでもあるものです。しかし、それに振り回されることなく、その感情の奥に隠れている本当の思いに気づくことが、家族との健全な関係を築き、相続問題を乗り越えるための鍵となります。
感情を整理し、冷静な判断を下すことで、感情の先にある大切なものを見つけたいものです。
さいごに
「人と比べても何もいいことはない。どんなに人と比べても、何もあなたは変わらない」という言葉を、テレビで黒柳徹子さんが言っていました。そもそも人と比べることをしなければ、嫉妬も羨望も顔を出さないですね。