先日、東京都行政書士会立川支部の新入会員研修会で、開業体験についてお話しする機会をいただきました。
研修会では、会社員から行政書士になった経緯や、開業してからの歩み、これまでの経験と現在の仕事とのつながりなどをお伝えしました。
講演の準備を進める中で、会社員時代から現在までの仕事を改めて振り返りました。
以前から関わっていた土地や建物、相続や権利関係についても、行政書士という立場になると、これまでとは違う角度から見えてきます。
今回は、研修会でお話しした内容の中から、「立場が変わると、見え方も変わる」というテーマを取り上げてみたいと思います。

会社員時代の仕事と、今の仕事との接点
私は、1990年に住宅メーカーへ入社し、土地活用や分譲事業などの仕事に長く携わってきました。
土地活用の仕事では、地主さんの相続対策として、アパートや低層マンションの建築を提案してきました。
分譲事業では、土地の仕入れから開発、企画、販売まで、一連の業務に携わりました。
こうした仕事を進める中では、農地転用や開発許可などの許認可、土地や建物の権利関係、親から子への住宅資金の贈与、親の土地の使用貸借などに関わる場面もありました。
また、土地や建物の背景には、家族関係や相続の事情があることも少なくありませんでした。
当時は、それらを行政書士業務との接点として強く意識していたわけではありません。
ただ、行政書士として開業した後、改めて振り返ってみると、会社員時代の仕事の中にも、現在の業務につながる場面が数多くあったことに気づきました。
関わる分野は重なっても、役割は異なる
会社員時代も、土地や建物を扱う中で、許認可や権利関係、相続に関わる場面がありました。
ただ、住宅メーカーの社員としては、住宅や集合住宅の建築・販売という事業の中で、それらに関わっていました。
一方、行政書士としては、相談者から事情や希望を直接伺い、抱えている課題を整理したうえで、必要な手続きや書類作成を通じて支援します。
行政書士の業務だけでは対応できない部分については、必要に応じて、ほかの専門家につなぐこともあります。
会社員時代と現在とでは、担う役割も仕事の目的も異なります。
同じ土地や建物、相続に関することであっても、立場が変わることで、見えるものや関わり方も変わったと感じています。
手続きの先にあるもの
研修会では、行政書士の仕事について、次のようにお話ししました。
建設業許可の先には、事業があります。
在留手続の先には、日本での生活があります。
成年後見の先には、ご本人の暮らしがあります。
相続の場面では、ご家族が大きな節目を迎えます。
行政書士の仕事では、正確な書類を作成し、適切に手続きを進めることが基本になります。
ただ、その書類や手続きだけで仕事が完結するわけではありません。
なぜ、その手続きが必要なのか。
相談者には、どのような事情や希望があるのか。
その手続きによって、何を実現したいのか。
書類や手続きだけを見るのではなく、その背景や目的にも目を向けながら、相談者にとって必要な手続きや選択肢を整理していくことが大切だと感じています。
これまでの経験が、違う形で生きることもある
行政書士として開業し、会社員時代とは、仕事の目的やお客様との関わり方が変わりました。
ただ、開業から数年が経って振り返ってみると、会社員時代に培ったものが、現在の仕事の中にも生きていると感じます。
土地や建物に関する知識だけではありません。
お客様から事情や希望を伺うこと。
複雑な内容を整理し、分かりやすく説明すること。
関係する方々の間に入り、調整をすること。
そうした会社員時代の経験も、現在の仕事の土台になっています。
当時から、行政書士の仕事に生かせる部分があるとは感じていました。
ただ、実際に開業してみると、想像していた以上に、これまでの経験が違う形で生きていることに気づきました。
さいごに
今回の研修会は、新入会員の皆さまに開業体験をお話しする機会でしたが、私自身にとっても、これまでの歩みを振り返る貴重な機会となりました。
立場が変わることで、仕事の見え方や関わり方は変わります。一方で、これまでに培ってきた知識や経験が、違う形で現在の仕事を支えていることにも改めて気づきました。
行政書士の仕事では、同じように見えるご相談であっても、事情やご希望は一人一人異なります。書類や手続きだけを見るのではなく、その背景にも目を向けながら、相談者のために何ができるのかを考えていきたいと思います。
これからも、これまでの経験を生かしながら新しい学びを重ね、一つ一つのご相談に丁寧に向き合ってまいります。
