民法1050条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人,相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は,相続の開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
この条文は、2019年の民法改正によって新設されました。これまで寄与分は、相続人のみに認められており、長男の嫁が被相続人の療養看護を尽くしたとしても、長男の嫁は相続人ではないため、遺産分割手続きで寄与分を主張できませんでした。
この制度によって、長男の嫁のように、相続人ではない親族が被相続人の介護などを行い、財産の維持・増加に貢献した場合、相続人に対して金銭を請求でき、相続人ではない親族の貢献に報いることができるようになりました。
特別の寄与の要件
・被相続人の親族であること
被相続人の親族であって、相続人ではない人です。親族とは六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族を指します(民法725条)をさしますので、兄弟や甥、姪、子の配偶者、配偶者の兄弟などです。
親族ではない、内縁の妻や、ヘルパーさんなどはダメです。
・被相続人に無償で療養看護などの労務の提供
相続人に対する寄与分の制度では金銭の援助などの財産上の給付も含まれますが、特別の寄与の制度では、労務の提供に限定されます。
・被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした
請求と期間制限
特別寄与者は、特別寄与料の支払いについて、当事者間に協議が調わないときは家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。
ただし、相続の開始及び相続人を知った日から6ヶ月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは請求できなくなります。
特別寄与料の額
家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めます。ただし、特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価格から遺贈の価格を控除した残額を超えることができないとしています。
さいごに
民法改正で導入された特別寄与制度は、相続人ではない親族の貢献に光を当て、従来の制度では報われなかった献身的な介護や家事労働を正当に評価する画期的な制度です。
長男の嫁のように、家族の一員として長年尽くしてきたにもかかわらず、法的な権利を持たなかった方々にとって、この制度は大きな希望となります。