自筆証書遺言保管制度が運用されて久しいですが、来週の令和5年10月2日から指定者通知の対象範囲が拡大されます。
「自筆証書遺言書保管制度」って何だったっけ?
「指定者通知の対象範囲が拡大」って何?
そこで、今回は「自筆証書遺言書保管制度」について整理してみます。
自筆証書遺言
まずは、自筆証書遺言のメリットとデメリットをまとめます。
メリット
・いつでもどこでも自分で簡単に作成できる
・費用がほとんどかからない
・誰にも内容を知られずに作成できる
デメリット
・自分で作成するので、要件を満たさずに無効になってしまう可能性がある
・意思能力等の問題により無効の場合がある
・第三者に変造、偽造される恐れがある
・家庭裁判所での検認が必要(法務局での保管制度を利用しない場合)
自筆証書遺言保管制度
このような自筆証書遺言のデメリットを補うために令和2年7月10日から始まった制度が「自筆証書遺言保管制度」です。
この制度の主な内容
・作成した自筆証書遺言が法務局で適正に管理・保管されます。
遺言書の紛失のリスクがなく、相続人等の権利関係者による遺言書の破棄、隠匿、改ざんなどを防ぐことができます。
・相続開始後、家庭裁判所による検印が不要です。
・相続開始後、相続人等が遺言書が預けられているか、確認することができます。
・相続開始後、相続人等が遺言書を閲覧することができます。
・相続開始後、相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けることができます。
通知について
自筆証書遺言保管制度を利用した遺言者が亡くなった際に、法務局から相続人に対して遺言書が保管されていることを知らせる制度です。
この通知には、「関係遺言書保管通知」と「指定者通知」の2種類あります。
関係遺言書保管通知
遺言者が亡くなって、相続人の1人が法務局で遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けると、遺言書の存在を他の相続人にも知らせる制度です。
この通知によって全ての相続人が遺言書の存在を知ることができるので、一部の相続人が黙って執行することを防ぐことができます。
ただし、相続人等の誰かが閲覧等をしないとこの通知はされません。そこで遺言者が家族に内緒で遺言書を保管した場合などのために、「指定者通知」の制度があります。
指定者通知
遺言者があらかじめこの通知を希望すると,遺言書保管所と法務局の戸籍担当部局との連携によって、遺言者の死亡の事実が確認できた時に,相続人等の方々の閲覧等を待たずに,遺言書が保管されている旨のお知らせが指定された人に届きます。
この制度によって、遺言書の存在を誰にも知らせていなかった場合にも、発見されないまま相続手続きが進められてしまうことを防ぐことができます。
指定者通知の対象範囲の拡大
これまでは、この指定者通知の対象者として指定できるのは受遺者等、遺言執行者又は推定相続人のうち、1名に限定されていました。
令和5年10月2日からは、受遺者、遺言執行者、推定相続人などに限定されなくなります。しかも3名まで指定が可能になります。
指定者通知の対象者をすでに1名指定している場合でも、変更の届け出で3名まで追加することもできます。
おわりに
遺言作成において万全を期すのならやはり公正証書遺言ですが、自筆証書遺言をお考えならば、この自筆証書遺言書保管制度を利用することをオススメします。
今回の改正で3名まで指定者通知を指定ができます。自分がもしものとき、いち早く遺言書が保管されている事実を確実に伝えてもらいたい3名はどなたを思い浮かべますか?