成年後見の見直し要綱案で見えてきた、“支援を組み立てる”という発想

先日、法務省から成年後見制度の見直しに関する要綱案が公表されました。

制度の話というと、どうしても専門用語が先に立ちます。ただ、今回の資料を読み進めていくと、目指している方向は比較的はっきりしています。

ひとことで言えば、「判断能力の程度に応じて制度の枠が決まる」考え方から、「必要な支援の中身に応じて組み立てる」考え方へ。

今回は、要綱案の細かな言い回しを追いかけるのではなく、この方向性が現場でどう見えてくるのかを、実務の現場感も交えながら整理してみたいと思います。

図:法定後見制度の見直しの概要(法務省公表資料)

「枠」より「中身」を先に考える制度へ

これまでの成年後見は、後見・保佐・補助といった枠組みが先にあり、そこから支援の範囲が広がったり狭まったりする構造でした。もちろん、それには制度としての分かりやすさがあります。一方で、現場では「今この人に必要なのは、そこまで広い支援だろうか」「この部分だけ手当てできれば足りるのに」と感じる場面もあります。

今回公表された要綱案では、そうした感覚に近づく方向が示されています。

先に“コース”を決めるというより、必要な行為や場面に応じて、代理権や同意といった支援を組み合わせていく。制度を使う側の言葉に置き換えるなら、「全部まとめて支える」から「必要な分だけ支える」へ、という動きです。

ここには、支援のための制度が、本人の選択や生活の手触りを必要以上に変えてしまわないように、バランスを整え直す意図も感じます。

「困る場面」をピンポイントで支える発想

実務の現場で困りごととして出やすいのは、財産の管理そのものだけではありません。

たとえば、「遺産分割協議のところだけ整えたい」「不動産の売却の手続だけ進めたい」といった場合です。日常の暮らしは成り立っていても、認知症などで意思能力の判断が問題になると、協議や契約といった行為そのものが成立しにくくなってしまいます。結果として、必要な手続が“できない”状態になり、家族も専門職も手を止めざるを得ない場面があります。

こうしたときに求められるのは、生活全体を大きく動かす支援というより、止まってしまった手続を前に進めるための支えです。必要な範囲に限って支援を組み立てられるかどうかで、現場の見通しは大きく変わります。

見直し要綱案には、そうした部分を「特定の場面だけ」支える道具立てが盛り込まれています。制度を使う目的を、漠然と「後見が必要かどうか」とするのではなく、「どこで困っているのか」「どこに支えが必要なのか」として捉える発想です。

相談の場で変わるのは「最初の設計」

制度がこの方向に進むとき、実務でより重要になるのは「最初の設計」です。

つまり、制度の種類を先に決めるのではなく、必要な支援の中身を言語化するところから始めることです。

何に困っているのか。

誰が関わっているのか。

どこまでを、どのくらいの期間、支える必要があるのか。

この整理が曖昧だと、制度の使い方も曖昧になり、あとになって「思っていたのと違う」という違和感につながりやすくなります。

これは、相続の相談でも同じです。結論を急ぐほど、理解の整理が十分に追いつかないまま話が進んでしまうことがあります。だからこそ、最初に“理解のための整理”を丁寧にしておくことが、結果として近道になります。

制度が「必要な分だけ支える」方向へ進むなら、私たちも「必要な分」を見極める力が求められます。言い換えると、制度を使うかどうかよりも先に、「支援の目的」を明確にする力です。

さいごに

成年後見制度の見直しは、制度の話に見えて、実は誰にとっても身近なテーマです。高齢化が進む中で、本人にもご家族にも関わり得る話だからです。

こうして見直しの議論が形になってくると、あらためて「何を守りたいのか」「どこまで支えるのか」を先に確かめておきたいものです。

今回の要綱案からは、「必要なときに、必要な分だけ支える」という方向が読み取れます。支援を広く構えるのではなく、困っている場面を見極め、必要な範囲に支えを組み立てていく。その発想は、これからの相談の場でいっそう求められていくのだろうと感じています。

私自身も、制度の動きを追いながら、相談の場でそれを“わかる言葉”に置き換え、本人の暮らしとご家族の安心が両立する形を、丁寧に整えていきたいと思います。

【参考資料】

法務省 法制審議会「成年後見制度の見直し」に関する公表資料(要綱案・概要等)

相続対策は事前準備が大切です。お早めにご相談下さい。

✉ お問合せフォーム

☎ 042-508-3031

この記事を書いた人

栗田 政和

栗田 政和

東京都府中市出身、現在は立川市内に在住。
中央大学法学部卒。
大学卒業後、住宅メーカーに32年勤務した後独立し、
行政書士栗田法務事務所を開業。
現在は行政書士兼相続コンサルタントとして、
立川近郊の相続問題に悩む方の助けになるべく奮闘中。
趣味はバイクツーリング、温泉巡り、幕末歴史小説、プロ野球観戦。