成年後見制度の見直しと、今できる備え

相続や終活のご相談を受けていると、「いざという時のために、何を準備しておけばよいのか」というお話になることがあります。

遺言書を作っておいた方がよいのか。

認知症などで自分で判断することが難しくなったとき、誰が手続きをしてくれるのか。

銀行や施設、役所の手続きができなくなったら、どうすればよいのか。

そうしたご相談の中で、成年後見、任意後見、見守り契約、財産管理契約といった制度や契約の話につながることがあります。

ただ、これらの言葉は聞いたことがあっても、それぞれの違いや使い方までは、なかなか分かりにくいものです。

そうした中で、成年後見制度については、現在、大きな見直しが進められています。

このような時期には、「今、準備を進めてもよいのだろうか」「もう少し様子を見た方がよいのだろうか」と迷われる方もいるかもしれません。

だからといって、制度が固まるまで何もしない方がよい、ということではありません。

すでに困りごとがある場合や、将来に向けて具体的な不安がある場合には、現行制度のもとでできることを確認しながら、必要な準備を進めていくことも大切です。

大切なのは、制度の違いを細かく覚えることではなく、自分の暮らしや家族の状況に照らして、誰に、何を、どこまで任せておく必要があるのかを考えておくことだと思います。

今回は、成年後見制度の見直しが進む中で、今できる備えについて考えてみたいと思います。

成年後見制度は見直しの時期にある

成年後見制度については、現在、見直しに向けた法案が国会で審議されています。

今回の見直しでは、これまでの後見・保佐・補助という類型のあり方を見直し、本人に必要な支援を、必要な範囲で利用できる制度にしていく方向性が示されています。

また、任意後見制度についても、開始や監督の仕組みに見直しが予定されています。

そのため、制度の細かな内容については、今後の法改正の成立状況や施行時期を確認しながら見ていく必要があります。

ただ、制度が変わる可能性があるからといって、将来への備えを先送りしてよい、ということではありません。

制度は変わっていくかもしれませんが、本人の意思をどのように確認し、必要な支援につなげていくかという視点は、これからも大切であることに変わりはないと思います。

今できる備えを整理しておく

将来への備えというと、まず遺言書を思い浮かべる方が多いかもしれません。

遺言書は、自分が亡くなった後の財産の承継について、自分の意思を残しておくための大切な備えです。

一方で、相続が発生する前の段階、つまり自分が生きている間に、判断能力や身体の状態が変わったときの備えも考えておく必要があります。

その場面で関係してくるのが、任意後見契約、見守り契約、財産管理契約といった仕組みです。

任意後見契約は、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ信頼できる人を定めておく契約です。

見守り契約は、定期的な連絡や面談などを通じて、本人の生活状況や健康状態を確認していくためのものです。

財産管理契約は、本人に判断能力がある段階で、預貯金の管理や各種手続きなどを委任するために利用されることがあります。

ただし、最初に考えるべきことは、どの契約を選ぶかではありません。

まず整理しておきたいのは、誰に任せるのか、いつから任せるのか、どこまで任せるのか、ということです。

そのうえで、どのように確認し、見守る仕組みにするのかも考えておく必要があります。

ここが曖昧なままだと、たとえ契約書を作ったとしても、本人やご家族の不安が残ってしまうことがあります。

反対に、こうした点を整理しておくことで、実際に契約書を作成する場合でも、もう少し家族で話し合う場合でも、次に何を確認すべきかが見えやすくなります。

制度の見直しを理由に、準備を先送りするのではなく、現行制度のもとでできることを確認しながら、必要な備えを一つずつ考えていくことが大切なのだと思います。

「任せる」ことと「確認する」こと

将来のことを考えるとき、「誰に任せるか」はとても大切です。

家族に任せるのか。
親族以外の信頼できる人に任せるのか。
専門職に任せるのか。
あるいは、それぞれの役割を分けるのか。

どの形が正しいということではありません。

本人の家族関係、財産の内容、生活状況、身近に頼れる人がいるかどうかによって、望ましい形は変わってきます。

ただ、誰かに任せるということは、すべてを丸投げすることではありません。

信頼しているから任せる。だからこそ、任せる範囲や確認の仕組みを明確にしておく。

これは、本人にとっても、任される側にとっても大切なことだと思います。

特に財産管理や日常生活の手続きに関わる場面では、善意だけでは支えきれないことがあります。

お金の管理、施設や病院とのやり取り、行政手続き、親族間の連絡。

そうした場面では、誰が何をするのかをあらかじめ整理しておくことが、後の混乱を防ぐことにつながります。

さいごに

成年後見制度は、今まさに見直しの時期にあります。

これから制度の内容が変わり、任意後見や法定後見の使い方も、少しずつ変わっていくかもしれません。

そのため、制度の動きを確認しながら、自分にとって必要な備えを考えていくことが大切です。

すでに困りごとがある場合には、現行制度のもとで何ができるのかを確認する。

将来に向けて不安がある場合には、誰に何を任せたいのかを整理しておく。

そのどちらも、これからの暮らしを守るための大切な準備だと思います。

制度が変わる時期だからこそ、ただ様子を見るだけではなく、今できることを一つずつ確認していく。

その積み重ねが、将来の自分を守り、ご家族や身近な方が判断に迷ったときの助けにもなるのだと思います。

まだ自分で考え、選ぶことができるうちに、自分の意思を言葉にしておく。

それが、将来の不安を少しでも減らすための備えになるのだと思います。

相続対策は事前準備が大切です。お早めにご相談下さい。

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この記事を書いた人

栗田 政和

栗田 政和

相続・遺言・成年後見を中心に業務を行っている。
住宅メーカーに32年間勤務した後、2022年に行政書士栗田法務事務所を開業。
相続や終活に関する相談において、手続きだけでなく、ご家族の状況や思いにも配慮した支援を大切にしている。
東京都行政書士会立川支部理事、公益社団法人成年後見支援センターヒルフェ正会員。
趣味はバイクツーリング、温泉巡り、歴史小説、プロ野球観戦。