ヒルフェと成年後見

「ヒルフェ」ってご存じですか?聞き馴染みのない言葉ですよね。

「ヒルフェ」はドイツ語で「助け、援助、支援、救援」という意味です。

そして、東京都行政書士会が設立した法人に「公益社団法人成年後見支援センターヒルフェ」(通称:ヒルフェ)があります。

私もこの「ヒルフェ」に所属しており、令和5年4月1日から家庭裁判所の後見人等候補者名簿に登載することになりました。

今回は、「成年後見」のおはなしです。

成年後見制度について

成年後見制度とはどのようなものかを整理してみます。

「成年後見制度」とは、認知症のお年寄りや知的障がいのある方が、現在の能力・財産を活かしながら、終生その人らしい生活が送れるよう、法律面・生活面から保護し支援する制度です。

そして、成年後見には大きく2つの種類があります。

・すでに判断能力が低下しているときに、家庭裁判所に後見人等を選任してもらって、その後見人に支援してもらう法定後見制度

・今はしっかりしているけれど、判断能力が低下するかも知れない将来に備えて、信頼出来る人に、自分がしてもらいたいことをあらかじめ依頼する契約を結んでおく任意後見制度

シンプルに言うと、将来のための準備は任意後見制度。必要になってしまったときは法定後見制度です。

必要な場面の一例

具体的に、どのようなときに必要な制度なのか、一例をあげてみます。

・脳卒中で父親が入院した。父名義の不動産を売却して入院費に当てたい。

・悪質商法で高額商品を買ってしまう認知症のおばあさんを守りたい。

・実家で一人暮らしをしている母親が認知症になり、病院の支払いや通帳の管理ができないみたい。

・一人で買い物など日常の生活はできても不動産の売買や金銭の貸し借りなどを手伝ってもらいたい。

・知的障がいを持つわが子の生活・財産管理をどうしよう。

・自分のことを理解してくれて信頼できる人がいるので、もしものときのことを頼みたい。

・判断能力はあるけれど、身体に障がいがあるので契約の代理や財産の管理をしてもらいたい。

・今は元気。ただ将来認知症になったあとのことが心配。

・身寄りがないので死後のことが気にかかる。誰にも迷惑がかからないようにしたい。

・一人暮らしなので定期的な見守りや財産管理をしてもらいたい。

法定後見制度ではその中に後見・保佐・補助があり、任意後見制度では任意後見契約のほかに継続的見守り契約や死後事務委任契約があります。それぞれの必要な場面やタイミングで、利用する制度は変わってきます。

複雑で、難しそうですが、ほんの少しでも不安があれば目を向けたいですね。

国会答弁と総務省通知文書

令和5年3月8日参議院予算委員会で、日本維新の会の石井苗子議員が裁判所の成年後見人の選任について質問する場面がありました。

それに対し、最高裁の馬渡家庭局長は

「 お尋ねの成年後見人につきましては、御本人の意思を尊重し、御本人の心身や生活の状況に配慮しながら必要な契約などを代理して行うと、さらに、御本人の財産を適正に管理していくことが基本的な職務として想定されているところでございます。

このような成年後見人につきましては、法律上資格が制限されているものではございませんが、本人の置かれた問題状況に応じて選任されているものと承知しておりまして、親族以外の方で選任されている場合の具体的な職種といたしましては、最高裁の実情調査によって明らかになっているものといたしましては、弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、行政書士、精神保健福祉士、社会保険労務士といったものが挙げられるというところでございます。」と答弁しています。

また、このタイミングで総務省から「行政書士が業として財産管理業務及び成年後見人等業務を行うことについて」通知文書が出されました。今後、成年後見人や不在者財産管理人、相続財産管理人等を必要とする方がますます増えると想定される中で、この分野においても、行政書士が専門家としての一翼を担い、貢献することが求められることになります。

さいごに

昨年の総務省統計局の発表では、日本の高齢のかたの人口は3,627万人です。専門家によると、その中の約700万人が認知症の症状として推定されるといわれています。

高齢化社会の今、人ごとではなさそうです。

後見制度は課題もありますが、将来の自分自身と家族のために、一度向き合ってみることも大切ですね。

この記事を書いた人

栗田 政和

栗田 政和

東京都府中市出身、現在は立川市内に在住。
中央大学法学部卒。
大学卒業後、住宅メーカーに32年勤務した後独立し、
行政書士栗田法務事務所を開業。
現在は行政書士兼相続コンサルタントとして、
立川近郊の相続問題に悩む方の助けになるべく奮闘中。
趣味はバイクツーリング、温泉巡り、幕末歴史小説、プロ野球観戦。