先日開催したセミナーで、「成年後見」についてのご質問がありました。その日、立川では夕方から雪になりそうな天気でしたが、終了時間を30分オーバーしてしまったにもかかわらず最後まで耳を傾けていただきました。「成年後見」って聞いたことはあるけれど馴染みがなくて、よくわからないですよね。
今回は成年後見についてのお話しです。
成年後見とは
成年後見制度とは、知的障害、精神障害、認知症などによって、ひとりで決めることに不安や心配のある人が、さまざまな契約や手続きをする際に、お手伝いする制度です。
成年後見制度には、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
法定後見制度:お手伝いが必要になったときにご本人やご家族、あるいは市長さんなどが家庭裁判所に申立てをします。後見人になる人は、裁判所が選任します。ご家族が選任されることもあれば、我々のような専門職が選任されることもあります。後見人は本人に代わって支払いをしたり(財産管理)、生活のための契約など(身上監護)をします。
任意後見制度:あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、ひとりで決めることが心配になったとき、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。将来必要になったときにスタートします。
成年後見制度の意義
・判断能力が低下した人の権利や利益を守るため
判断能力が低下した人は、自分の判断で契約を締結したり、財産を管理したりすることが難しくなります。そのため、不利益な契約を結んでしまったり、財産を不当に処分されたりするリスクが高まります。成年後見制度を利用することで、そのようなリスクを軽減し、判断能力が低下した人の権利や利益を守ることができます。
・判断能力が低下した人の生活を支援するため
判断能力が低下した人は、日常生活を送るにも困難を感じる場合があります。そのため、介護や福祉サービスを受けることが必要となります。しかし、これらのサービスを受けるためにも、契約を締結したり、手続きをしたりする必要があります。成年後見制度を利用することで、そのような手続きを本人に代わって行うことができ、判断能力が低下した人の生活を支援することができます。
・判断能力が低下した人の意思を尊重するため
判断能力が低下した人でも、自分の意思や考えを持って生きる権利があります。成年後見制度は、判断能力が低下した人の意思を尊重し、その意思に沿った支援を行うことを目的としています。そのため、成年後見人は、ご本人の意思を十分に尊重した上で、後見業務を行います。
残念なイメージ
一方、一部のメディアなどによって、ネガティブなイメージを持っている人もいます。
・本人の自由を奪う制度
本人の意思能力が不十分になった場合に利用される制度ですので、後見人には本人の財産を管理・処分する権限や、本人の契約行為を代理・監督する権限が与えられています。このため、成年後見制度を、本人の自由を奪う制度として捉える人もいます。
・後見人の不祥事
後見人のなかには、義務を果たさず、本人の財産の横領や、虐待などで報道されることがあります。このような不祥事が成年後見制度に対するネガティブなイメージを助長しています。
・コストがかかる制度
成年後見制度を利用するためには、後見人の報酬を負担する必要があります。これらの費用は、本人の財産から支払われるため、本人やその家族の経済的負担となる可能性があります。そのため、成年後見制度を、コストがかかる制度として捉える人もいます。
成年後見について思うこと
テレビや雑誌などで成年後見の特集が組まれると、多くの場合ネガティブな印象として受取られがちです。一部の不祥事によって、このようなマイナスのイメージが先行してしまうことはとても残念です。
ほとんどの後見人は、本人の意思を最大限尊重し向き合い、誠実に取り組んでいます。
超高齢化社会に向けて益々この制度を必要とするひとが増えます。目的や意義を正しく理解することが大切です。
成年後見の現場から
私が後見人としてお手伝いしている被後見人のAさんは、私のことをすぐ忘れてしまいます。何回会っても、「あなた誰?」という顔をします。先日、新年の挨拶にAさんのいる施設に行きました。やっぱりすぐに思い出してくれません。「栗田ですよ」と言うと、Aさんは決まって「栗田ひろみの栗田だね」と思い出します。(栗田ひろみはAさんが若い頃テレビに出ていたタレントさんだそうです。)栗田のことは、毎回忘れてしまいますが、若い頃の仕事の話しやフォークソングの話題には饒舌です。
さいごに
成年後見制度は、課題もたくさんあります。本年度から法制審議会で民法等の改正が審議されるようです。必要な人が必要なタイミングで後見制度を利用できるようにブラッシュアップされるといいですね。