この映画のタイトル、強烈ですね。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、実はこれ、映画のタイトルです。
GWに偶然アマゾンプライムで見た映画です。
在宅医と患者とその家族の物語。終末医療のお話しです。
私自身、末期がんの母親を在宅で看取った経験がありますので自分の経験と照らし合わせながら、感情移入してしまいました。
今回は、「痛くない死に方」のおはなしです。
この映画について
原作は長尾和宏医師。
末期がん患者とその家族が、抗がん剤などの痛みを伴う入院を選ぶのか、それとも自宅で穏やかに最期を迎えるのか。そして本人、家族、医師がどのように向き合うのかが、この物語のテーマです。
本人の意志を尊重しながら在宅医療を選択し、苦しみ抜いた末に亡くなってしまった患者を担当した柄本佑演じる若い在宅医が、何が正解なのか分からず苦悩します。
若い在宅医は奥田瑛二演じる在宅医の先輩に相談します。
在宅医の先輩の指摘に胸を突かれ、先輩のもとで在宅医療の現場を見学し、在宅医の在り方を模索しながら、最期を迎える患者と向き合っていくお話しです。
人間を好きになれ!
若い在宅医が、先輩の在宅医に質問する場面があります。
柄本佑「在宅医にとって一番大切なことは何なのでしょうか」
奥田瑛二「人間を好きになれ!」
大学病院で研修医として経験を積んで、医師として現場に立つ若い在宅医は、患部は注意深く診ますし、検査結果のデーターもしっかり見ます。しかし、患者やその家族の心の中は一切見ようとしませんでした。
この「人間を好きになれ!」から少しずつ患者やその家族との向き合い方が変わっていきます。
尊厳死宣言
この物語のもう一つのテーマが「尊厳死宣言」です。
これは私の業務の一つでもありますので、少しだけ触れます。
尊厳死とは、回復の見込みのない終末期に苦痛を緩和するケアだけを行い、延命措置は行わないで、自然な状態で死を迎えることをいいます。
安楽死と混同されがちですが、まったく別です。安楽死は治癒の見込みのない病人を本人の希望によって薬物投与などで人為的に死に至らしめることですから、違法です。
これに対し、尊厳死は「人としての尊厳を保って最期のときを迎えたい」「過剰な医療は受けずに最期は自然に死にたい」と考えることです。
この意思表示は、意思能力があるうちに、「尊厳死宣言公正証書」によって表明することができます。
(注)医師の立場として、治療をやめてしまうことが倫理面や殺人罪を問われるおそれがあることから、尊厳死宣言公正証の作成によって必ず尊厳死が実現できるとは限りません。
さいごに
この映画で心に突き刺さったセリフがあります。奥田瑛二演じる在宅医のセリフです。映画を見ながら一時停止してメモったのは初めてです。
「大病院の専門医は臓器という断片を診る。
俺たち町医者は物語を見る。
人生と向き合うというのかなぁ、人間というのは体と心と社会存在と、あとはスピリチュアルな側面も持っているよな。
それを丸ごと見るのが医療だと思うし、そこに俺は魅力を感じるんだよ」
このセリフ、自分に当てはめてみる。
「あなたの街の法律家」を標榜する行政書士の端くれとして、「俺たち町医者は物語を見る」は心に刻んでいきたいと思います。