ここ数年、相続に関する様々な制度が大きく変化しています。そして、その流れは今年も進んで行く予感です。
今年の初投稿は、憶測、妄想を取り入れながら「相続」を眺めてみたいと思います。
ここ数年で変わったこと
ここ数年で、様々な制度が見直されました。代表的なものを幾つか整理してみます。
・遺留分の侵害額の金銭請求
これまで、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害者に対して、遺産の物権的給付(土地や建物などの所有権の移転など)を求めることができましたが、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することが可能になりました。
・自筆証書遺言の方式の緩和
これまで、自筆証書遺言は、遺言書の文言をすべて自筆で作成する必要がありましたが、財産目録などをパソコンで作成することが可能になりました。
・配偶者居住権の創設
配偶者居住権とは、配偶者が被相続人の死亡後に、一定期間無償で被相続人の住んでいた不動産を使用できる権利です。配偶者が遺産分割協議で相続財産を取得できなかった場合でも、配偶者居住権を取得することで、一定期間は住み続けることができるようになりました。
・法務局における自筆証書遺言の保管
これまで、自筆証書遺言は、相続人が自宅や金融機関などに保管するのが一般的でしたが、法務局で自筆証書遺言を保管できるようになりました。
・相続土地国庫帰属制度の創設
昨年の目玉でした。相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得した土地を国に無償で譲渡できる制度です。相続人が土地を管理・活用する意思がなく、土地の所有が負担となる場合に利用できます。
・相続登記の義務化
今年の目玉です。これまで、相続登記は相続人の任意とされていましたが、2024年4月1日から義務化されます。相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
ちょっと未来に変わりそうな妄想
ここで、ちょっと未来に実現しそうな相続の手続きについて妄想してみます。
・相続手続きは、役所や金融機関等の窓口で行うことが一般的でしたが、オンラインでできるかも?
・遺産分割協議書は相続人全員の署名・実印が必要ですが、電子署名でできるようになるかも?
・遺言書は、紙に手書きで作成したり公証役場での作成が一般的ですが、パソコンやスマホで作成した遺言書を、法務局に保管できるようになるかも?
・相続人を確認するために、戸籍の収集が必要ですが、相続人全員の戸籍が一括でPCにダウンロードできるようになりかも?
他にも、AIで遺言書を作成したり、マイナンバー制度が発展して100以上あると言われている相続手続きがあっという間に出来てしまう時代がやって来るかもしれませんね。
興味深い発言
立憲民主党の小川淳也議員が、お正月番組で相続に関して興味深い発言をしておりました。要約すると、以下の点です。
・高度経済成長期の日本の人口構成は若者が多く高齢者が少ないピラミッド型をしていた。しかし少子化傾向が続いてきた現在、日本の人口ピラミッドは逆三角形になりつつある。そこで増大する相続財産に対する課税を強化することで数10兆円の財源を生み出し、それを若者へと還元していく必要がある。
・10兆円の財源が確保できれば国立大学の無償化や私立大学の学費半額化なども可能になり、高齢者が割安に介護施設を利用できるようになることも、介護従事者の賃金の引き上げも可能になる
・そもそも一部の高齢者が資産形成に成功してきたのは、現役世代の負担による手厚い社会保障負担のおかげだったことを忘れてはならない。そうして形成された資産を自分の子孫だけでなく社会全体に還元することは理に適っているのではないか。
この提言がどこまで受け入れられて現実味を帯びるかは未知数ではありますが、社会の変化において、多方面で「相続」の新たな考え方が唱えられていくのは、自然な流れかも知れません。
さいごに
年頭にあたって、ちょっと先の相続について勝手に妄想してみました。あくまでも妄想ですので根拠はありません。あしからず。
ただし、AIの台頭、デジタル化、人口減少、益々の高齢化など、社会は大きく変化しています。この変化を見逃すことなく、日々向き合いながら取り組んで参りたいとおもいます。
本年もよろしくお願いします。