相続や終活のご相談では、ご本人やご家族から、これまでの経緯やお気持ちを伺うことがあります。
親の介護や兄弟姉妹との関係、実家の管理、預貯金や不動産のことなど、話題はさまざまです。
相続の問題は、財産や手続きの話であると同時に、ご家族の関係や、これまで言葉にできなかった思いが関わることもあります。
今回は、相続の相談で大切になる「中立に聴く」という視点について、考えてみたいと思います。

一方の話だけでは見えないことがある
ご相談では、まず目の前の相談者のお話を丁寧に伺うことが大切です。
困っていることや不安に感じていること、納得できないことを伺うことで、問題の輪郭が少しずつ見えてきます。
ただ、家族の問題では、一方のお話だけでは見えないこともあります。
相談者には相談者の事情があります。
一方で、他のご家族にも、その方なりの事情や受け止め方があるかもしれません。
同じ出来事でも、立場が違えば見え方が変わることがあります。
たとえば、親の介護や実家の管理についても、「自分ばかりが負担してきた」と感じる方がいる一方で、別の立場から見ると、また違う事情があるかもしれません。
相続の話し合いでは、それぞれの立場から見える景色が違うことがあります。
中立に聴くことは、冷たく聴くことではない
中立というと、どちらにも寄らず、少し距離を置いて見ることのように感じられるかもしれません。
しかし、相続や終活の相談で大切なのは、ただ距離を置いて見ることではないと思います。
目の前の方の不安や悩みを丁寧に受け止める。
そのうえで、一方の思いだけで全体を決めつけない。
他のご家族の事情や、法律上の位置づけも確認していく。
そのような姿勢が必要になる場面があります。
たとえば、相続では「納得できない」という気持ちが強く出ることがあります。
その気持ちを無視して手続きだけを進めようとしても、なかなか前に進みません。
一方で、「納得できない」という気持ちだけで判断してしまうと、法律上の権利関係や、今後の手続きとの間にずれが出てしまうこともあります。
だからこそ、気持ちを受け止めながらも、事実関係や手続きの流れを一つずつ確認していくことが大切だと感じます。
相談者の思いを受け止めながら、少し視点を広げる
専門家に相談するとき、相談者は「自分の気持ちを分かってほしい」と感じていることが多いと思います。
その思いを受け止めることは、とても大切です。
ただ、相談者の気持ちを受け止めることと、そのまま結論を急ぐことは、少し分けて考える必要があります。
相続の場面では、法律上できることと、家族関係として望ましいことが、必ずしも同じとは限りません。
手続きとしては進められる。
けれど、その進め方で家族関係がさらにこじれる可能性がある。
反対に、感情面では納得しづらい。
けれど、法律上は一定の整理をしなければならない。
そのような場面では、すぐに一つの答えを出すのではなく、少し視点を広げて考えてみることも必要だと思います。
相談者の話を丁寧に聴きながら、必要な情報を整理し、どのような選択肢があるのかを一緒に考える。
そのような関わり方を、相続や終活の相談では大切にしたいと思っています。
さいごに
相続の話し合いでは、誰か一人だけが正しく、誰か一人だけが間違っているとは言い切れないことがあります。
それぞれに事情があり、それぞれに言い分があります。
だからこそ、一方の話だけで決めつけず、まずは丁寧に聴くこと。
そのうえで、事実関係や法律上の位置づけ、これから必要になる手続きを確認していくこと。
その積み重ねが、落ち着いた話し合いにつながることもあると思います。
相続や終活のことで悩んだときは、すぐに結論を出す前に、少し立ち止まってみてもよいのかもしれません。
一つの見方だけで急いで判断するのではなく、少し視点を広げて考えてみること。
相続の話し合いでは、そのような時間も大切なのだと思います。
