行政書士として相続や遺言のご相談をお受けする中で、遺言書についてよく聞かれる質問があります。
「まだ遺言書を書くほどの年齢じゃないと思うんだけど…」 「うちはそれほど財産もないし、必要ないのでは?」
こんな風に感じる方は決して少なくありません。
しかし、私自身、多くの相談者の人生に触れさせていただく中で、遺言書には単なる財産の分配方法を伝えるだけではない、「大切な想い」を伝える深い意味があると考えるようになりました。

「遺言書=大切な人への手紙」という想い
私が遺言書の作成をおすすめする理由の一つは、「遺言書は大切な人に宛てた手紙のようなもの」だと考えているからです。
遺言書を作成するとき、自分の財産をどう分けるかという問題だけでなく、「家族に何を伝えたいか」「自分が何を大切に生きてきたのか」を自然に振り返る時間が生まれます。
財産の多さや少なさは重要ではありません。むしろ重要なのは、自分がどんな想いを家族に残したいのかを、改めて言葉にしてみることです。
相続手続きよりも、まずは「何を伝えたいか」
私はこれまでコラムの中で、「手続きを優先するのではなく、何を伝えるかを優先すべきだ」と繰り返しお伝えしてきました。遺言書の作成もまた同じです。
家族間で相続の手続きが始まると、財産分配という手続き的な面に意識が集中し、時として家族間の絆が損なわれることがあります。遺言書は、そうした状況を防ぐためにも、「家族に本当に伝えたいことは何か」をまず明確にすることが大切なのです。
私の経験上、遺言書を残していた方のご家族は、「故人の想いをはっきり知ることができてよかった」と語ってくださることが多くあります。財産分配を超えた想いが伝わるからこそ、相続後も家族間の絆が守られるのです。
「割愛」する勇気を持つこと
遺言書を書く際、「あれも伝えたい、これも伝えたい」とついつい多くを詰め込みたくなることがあります。しかし、ここで必要なのは、本当に伝えたいことを見極め、余計なことを「割愛する勇気」を持つことではないでしょうか。
以前、「割愛」をテーマにコラムを書いた際にも、「本質をつかむためには、勇気を持って割愛することが大事だ」と自分自身に言い聞かせたことがあります。
遺言書も同じです。自分にとって本当に大切な想いを見つめ、その本質だけを伝えるように心がけてみてください。
遺言書は、自分自身と向き合うチャンス
遺言書の作成を単なる手続きと捉えるのではなく、「自分の人生を整理する大切な機会」と捉えてみてはいかがでしょうか。
「これまでどんな人生を送ってきたのか」 「自分は何を家族に伝えたいのか」
自分自身と向き合い、静かに語りかけるように想いをまとめる時間は、とても尊いものです。
「遺言書は、想いを伝える最後の手紙」
遺言書を作成することは、大切な家族に宛てた最後の手紙を書くことです。
行政書士として、私はこれまで多くの遺言作成のお手伝いをさせていただきました。その中で感じたのは、「遺言書を残すことは愛情である」ということです。
もしも遺言書を作成することに迷われたり、不安に感じたりすることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。一緒にあなたの大切な想いを形にしていきましょう。
※この記事は2022年5月1日に作成した内容を、最新情報や筆者の想いを反映してリライトしました。