相続手続きにおいて、まず必要となるのが相続人を確定することです。そのために、戸籍を収集し、相続関係説明図を作成します。被相続人の出生まで遡っていくうちに、その家族や先祖の歴史が見え隠れしてきます。
今回は、「戸籍から見える家族の歴史」についてのお話しです。
戸籍とは
戸籍とは、日本において個人の出生、結婚、死亡などを記録する公式な文書です。これにより家族関係が明確に示され、相続手続きの際には相続人を確定するために重要な役割を果たします。
例えば、相続の際には被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの全ての戸籍を揃える必要があります。戸籍は本籍地のある市町村役場で取得します。婚姻などで本籍地が転籍すると、転籍先の市町村役場で取得します。このようにして、被相続人の出生から死亡までの戸籍を一つ一つ遡っていくのです。
この作業を通じて、親、祖父母、曾祖父母など、家族の歴史が少しずつ明らかになっていきます。戸籍収集は手間のかかる作業ですが、相続手続きを円滑に進めるためには欠かせないステップです。
家族の歴史を読み解く
戸籍を遡ることで、家族の歴史や先祖の足跡が見えてきます。古い戸籍ほど、戸籍に記載されている手書きの文字を読み取ることも大変になりますが、昭和、戦前、大正、明治と時代を遡っていくうちに、それぞれの家族が歴史の中で繋がっていたのだと実感します。
祖父の時代、今住んでいる地域と全く別の地域がゆかりだったのだと発見することもあります。
たくさんの兄弟がいる大家族が、婚姻などで一人一人、家族の戸籍から独立していく様子もまた、家族の歴史です。
家族の絆を再認識する
戸籍を収集し相続関係説明図を作成したとき、依頼者に事務的な説明をするだけではなく、その家族の物語をイメージしながらその歴史に想いを馳せ、共有します。もしかしたら、想像や妄想もあるかも知れません。
家族の歴史を知ることは、現在の家族の絆を強めるきっかけにもなります。例えば、先祖がどのような生活をし、どのような苦労を乗り越えてきたのかを想像、妄想することで、家族に対する感謝の気持ちが深まることもあります。また、家族の歴史を共有することで、家族間のコミュニケーションが活発になり、絆がより強くなることもあります。
さいごに
パスポートの申請などで、今の自分の戸籍(全部事項証明)を見る機会は時々ありますが、先祖の戸籍を見る機会は中々ありません。
私が始めて先祖の戸籍を見たのは、20代の頃の父の相続のときでした。墓石に刻まれた会ったことのないご先祖の名前を、読みにくい昔の戸籍から見つけ、歴史を感じながら家系図を作りながら我が家の物語を想像したことを思い出します。