「縁起でもない」を考える 〜相続と向き合うために〜

相続や終活について話をすると、「縁起でもない」と言われることがあります。特に、高齢のご家族に「相続の準備を考えておいたほうがいいのでは」と話を持ちかけると、「そんな話をするなんて縁起でもない」「まだ先のことだから大丈夫」といった言葉で終わってしまうことも少なくありません。

確かに、相続は「死」を前提にする話でもあり、意識的に避けてしまう気持ちもわかります。しかし、「縁起でもない」と言って後回しにしてしまうことで、結果としてご家族が困ってしまうこともあります。

今回は「縁起でもない」という言葉が持つ意味と、相続とどう向き合っていくべきかを考えてみたいと思います。

「縁起でもない」という言葉の意味

「縁起」という言葉の語源は仏教にあります。「縁起(えんぎ)」とは、「すべての物事は因(原因)と縁(条件)が結びついて生じる」という考え方を表します。つまり、何かひとつの出来事が起こるのは、それまでのさまざまな要因が関係しているということです。

一方で、日常的に使われる「縁起」という言葉には、「良いことや悪いことを引き寄せる兆し」といった意味があります。「縁起が良い」「縁起を担ぐ」といった表現もその一例です。

そして、「縁起でもない」という言葉は、「不吉なことを口にするな」「悪いことが現実になってしまうかもしれない」という考えから使われるようになりました。日本人には「言霊(ことだま)」の文化があり、口にしたことが現実になると信じられてきた背景も影響しているのかもしれません。

相続の場面で「縁起でもない」と言われる理由

なぜ、相続の話が「縁起でもない」とされるのでしょうか。その背景には、「死を前提とした話をするのは避けたい」という心理があるように思います。人は誰しも、自分や家族の死について考えることを無意識のうちに避けようとします。まだ元気で過ごしているのに、亡くなった後の話をするのは失礼ではないか、あるいは、不吉なことを口にすることで本当に悪いことが起こってしまうのではないか。そんな気持ちが、「縁起でもない」という言葉につながっているのかもしれません。

しかし、人生には何が起こるかわかりません。相続の準備が整っていなければ、残された家族が困ることもあります。親が亡くなったあと、財産の分け方をめぐって兄弟姉妹の意見が対立し、関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。あるいは、遺言がないために手続きが複雑になり、話し合いがまとまらず、何年も相続が終わらないというケースもあります。さらに、認知症などにより判断能力が低下した後に財産の管理が難しくなり、家族が対応に苦労することも少なくありません。

そう考えると、相続の話を避けることが、本当に「家族のため」になるのかどうか、一度立ち止まって考えてみることも大切かもしれません。「縁起でもない」と思う気持ちは自然なことですが、その気持ちのまま何も準備をしないことで、結果的に家族が困ることになってしまうのであれば、それは本末転倒です。

「今はまだいい」「自分がいなくなった後のことは、後に残った人たちが考えればいい」と思ってしまうかもしれません。でも、家族にとって本当に大切なのは、「いざという時に困らないように、今できる準備をしておくこと」です。相続の話は、決して不吉なものではなく、大切な家族の未来を守るための準備です。

「縁起」を前向きにとらえる考え方

「縁起でもない」と言って相続の話を避けるのではなく、「未来の安心のために準備をする」と考えてみるのはどうでしょうか。

相続の準備は、ただ財産を分けるためのものではありません。むしろ、それは家族の絆を守り、円満な関係を保つための大切な機会でもあります。自分がいなくなった後のことを考えるのは気が進まないかもしれませんが、遺された家族が困らないようにすることこそが、「家族を思う気持ち」の表れとも言えます。

まずは、自分の想いを整理することから始めてみるのもよいかもしれません。エンディングノートを活用すれば、自分の希望を記録し、家族が迷わず対応できるようになります。財産の状況を整理しておけば、相続手続きがスムーズに進み、無用なトラブルを防ぐことにつながります。そして、家族と少しずつ話し合う機会を持つことで、相続を「避けたい話題」ではなく、「家族の未来を考える大切な時間」として受け止められるようになるかもしれません。

仏教の「縁起」の考え方に立ち返れば、すべての出来事にはつながりがあります。相続の準備をすることも、家族の未来を整えるための大切なつながりのひとつです。「縁起が悪いから避ける」のではなく、「家族の縁を大切にするために準備をする」と考えることで、相続に対する意識も変わってくるのではないでしょうか。

さいごに

「縁起でもない」という言葉の背景には、相続について向き合うことの難しさがあるのかもしれません。しかし、相続の準備は決して「縁起が悪い」ことではなく、「家族のためにできる大切な準備」です。

「縁起を大切にする」ということは、単に悪いことを避けるだけではなく、「より良い未来へつなげる」ことにもつながります。

「縁起でもない」と避けるのではなく、「家族の縁を守るために」と考えることで、少しずつでも準備を進めていきたいものです。

相続対策は事前準備が大切です。お早めにご相談下さい。

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この記事を書いた人

栗田 政和

栗田 政和

東京都府中市出身、現在は立川市内に在住。
中央大学法学部卒。
大学卒業後、住宅メーカーに32年勤務した後独立し、
行政書士栗田法務事務所を開業。
現在は行政書士兼相続コンサルタントとして、
立川近郊の相続問題に悩む方の助けになるべく奮闘中。
趣味はバイクツーリング、温泉巡り、幕末歴史小説、プロ野球観戦。