後見の制度は、民法によって定められている法定後見があります。
一方、任意後見については「任意後見契約に関する法律」で定められています。この法律は平成12年に施行され、11条でなる法律です。
今回は、この法律をながめていきます。
趣旨
第1条 この法律は、任意後見契約の方式、効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めるものとする。
この法律の目的です。任意後見契約のルールを定めるルールです。
定義
第2条では、任意後見契約に関する用語の定義について定めています。
任意後見契約:委任者が受任者に対して、精神上の障害によって判断能力が不十分な状況になった場合に自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部または一部について代理権を付与する委任契約で、任意後見監督人が選任された時から契約の効力が生ずる旨の特約を付したものをいいます。
本人:任意後見契約の委任者のことです。
任意後見受任者:任意後見監督人が選任される前の任意後見契約の受任者のことです。
任意後見人:任意後見監督人が選任されたあとの任意後見契約の受任者のことです。
任意後見契約の方式
第3条では、任意後見契約は公正証書ですることが決められています。
任意後見監督人の選任
第4条では、任意後見監督人について定めています。任意後見監督人は、家庭裁判所が選任します。裁判所に請求できる人などについて定められています。
裁判所に任意後見監督人を請求出来る人は、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者です。
任意後見監督人の欠格事由
第5条では、任意後見監督人になることができない人について定めています。
任意後見人を監督するひとですから、任意後見受任者、任意後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹は任意後見監督人にはなれません。
本人の意思の尊重等
第6条では、任意後見人は、本人の意思を尊重し、かつその心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない、と定めています。
任意後見監督人の職務等
第7条では、任意後見監督人の職務について定めています。任意後見監督人は、後見人に対して、後見事務の報告を求め、または財産の調査などができます。
任意後見人の解任
第8条では、任意後見人の解任について定めています。任意後見人に不正な行為や任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができます。
任意後見契約の解除
第9条では、任意後見契約の解除について定めています。任意後見監督人が選任される前はいつでも解除ができますが、任意後見監督人が選任されたあとは正当な事由と家庭裁判所の許可が必要です。
後見、保佐及び補助との関係
第10条では、法定後見との関係について定めています。任意後見と法定後見では、原則として任意後見が優先されますが、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、家庭裁判所は後見開始の審判をすることができます。
任意後見人の代理権の消滅の対抗要件
第11条では、任意後見人の代理権の消滅の対抗要件について定めています。任意後見人の代理権の消滅は、後見登記を取り消さなければ、善意(事情を知らない)の第三者には対抗できません。
以上が「任意後見契約に関する法律」の全11条です。任意後見契約は、高齢化社会における重要な制度です。将来の不安を解消し、安心して暮らせるよう、早めに準備することをおすすめします。